2019年11月10日日曜日

noteへの移行

このブログはnoteへ移行します。ここはもうしばらく残しておきます。

移行先です→note

2019年6月9日日曜日

NHK俳句 2019年上期

俳句編です。

「蜆」
じゃらじゃらと一年生の蜆汁/佳作

「梅」
亡祖父の寂しき梅の葉の茂る

「土筆」
弟の手が光る土筆の通学路

「薄氷」
薄氷やサドルを上げてちょうどいい

「椿」
玄関の音を待つなり花椿

「春寒」
春寒や生命線を描き足せり

「たんぽぽ」
氷上をふわりふわりと綿毛の子

「蛙の目借時」
一行ずつずれていくsum目借どき

「落花」
左手の落花あたかもプロポーズ


選に入ったものは1句だけでした。
もっと俳句もいいものが詠めるようになりたいです。
全体的に窮屈で理屈っぽすぎるきらいがあり、
もう少し伸びやかに、それから句性?を意識したほうがいいかなあと思っています。
句集も読みたい。

NHK短歌 2019年上期

NHK短歌に投稿した歌のまとめです。
選に入ったものはTwitterで更新していますが、
落選したものも含めて半年に一度のペースでブログにまとめておこうと思います。
Twitterに上げるのをやめたときのから、6月号の分まで。


「映画」
昨日観た映画の続きのような朝きみが卵を焼く音がする/佳作

「子ども」
2分の1成人式を終えし子はいくつも顔を使い分けおり

「鳥」
ていねいに盛り付けられた鶏飯よ私を攫ってくれぬだろうか

「耳」
追憶、そしてきれいな言葉ほど届かぬ耳を持ち続けたい/入選

「会う」
会うたびに深くなりゆくえくぼから抜け出せないまま終わる夏期講習/佳作

「父」
読点の代わりに空いたスペースが差出人を父だと告げる/佳作

「若」
若鶏のからあげ消えてゆく口のひかりの観測結果を知らない


題かテーマは忘れました…。ちゃんと記録しておきます。
入選を頂いた「耳」の歌は、初句を最後までこれでいいのか悩んでいました。
なので、選者の方に初句4音が成功していると言われてすごく嬉しかったです。

2回くらい詠めなかったときもあるのですが、
自分にしてはちゃんと続いているな~と自分を褒めています。
私自身寡作だと思いますが、題が与えられて月に2度というペースが合っているのかもしれません。

とはいえ、いつまで続けられるかもわかりませんが
無理のないようにやっていきたいです。

2019年6月1日土曜日

【感想】スーパーマッシブ(2/2)

いくぜ後半戦。
(前半はこちら


カー解と誤字にまみれた六法とわたしを喰らう鬼さんどちら/@aokikenichi「柘榴」
カー解についてはこちら(いや、お恥ずかしながら全くわかりません)。カー解だけでなく物理学や数学に関連した単語や人名が随所に見られますが、どこか幼さを感じる言葉遣いと見事に調和しています。

ミスドでは話せないことを話します窓の外では明日まで雨/ななの「それでもいいよ」
「ミスドでは話せないこと」からオープンな場所では話せないような込み入った内容だと想像ができます。しかしここでの重点は下句ではないかと思います。単なる情景描写ではなく、雨であなた(聞き手)は明日まで帰れない=明日まで続くような長い話をする、というように感じ取りました。いったいどんな話なのか、興味が尽きません。

リサイクルボックス行きの空き缶のどの局面を死期と呼ぼうか/堂那灼風「相似」
連作全体のテーマは”生命”でしょうか。スケールの大きく、それでいて繊細さも垣間見える歌が並びます。その中でも輪廻に焦点を当てているこの歌は、着眼点の妙はもちろんですが、言葉ひとつひとつの選択が特に素晴らしいです。

かなしみの標本として両耳にさがった君の真珠が欲しい/水無月水有「大マゼラン研究所」
シンプルに好きな歌です。涙のかたちにも見える君の真珠をストレートに欲しいという潔さ。しかも「かなしみの標本として」って…最高じゃないですか。いやもうこれプロポーズじゃん‥。最高。

(メリーゴーランドに嘘を持ちこんだ罪で月面まで徒競走)/はね「夢と罰」
2~4首目は夢で見た出来事を詠っているのでしょう。突拍子もない飛躍もこれが夢だと暗示するファクターのひとつになっています(夢はいつだってありえない展開の連続だ)。とても丁寧に練られた連作だと思います。こんな連作を作れるようになりたい。

悪口のような炎が胸に燃え広がる前に涙を流す/荻森美帆「誰かが百歳になったころ」
「悪口のような炎」は怒りや憎しみ、嫉妬などの負の感情。それを飛び火させないよう自ら涙を流して消火(消化)している。強いひとにしかできないことだが、果たしてこれは強さだろうか。いつかのだれかを見ているようで、主体のことを放っておけない気持ちになる。


無事に後半の感想を書くことができ、ほっとしています。
5月はTwitterでたくさんRTといいねとリプライを貰えたので嬉しかったです。
最近は急に気温が上がって体調を崩し気味です。
甘いものを食べて乗り切りたいです。
以上、近況報告?でした。

2019年5月26日日曜日

【感想】スーパーマッシブ(1/2)

10連休にまた会いたい嫉妬林檎です。

今回のスーパーマッシブは、先日のブラックホール初撮影成功のニュースに端を発し(?)、荻森美帆さんが企画された、ブラックホール関する短歌1首以上を含めた連作5首のネプリです。

そもそもブラックホールの撮影なんてどうやっているのか全然わからなくて
適当な記事を読んだのですが…ちんぷんかんぷんでした(´・ω・`)
(ちなみに僕が読んだ記事はこちら

音もなく電子のほのお焚書するモノリスの裏に回る/笛地静恵「ぬばたまの目」
私の脳内辞書にない言葉が連作全体で多く用いられており、ひとつずつ調べながら読んだのですがなかなか読み解けません…。「モノリス」は単なる岩というより人工的な石柱と捉えるべきか。「電子のほのお」と合わせてSF感が好きです。

鶏卵がはじめて光にさらされて熱々ご飯とともに食われる/丸地卓也「啄木の黒きもの」
すぐに浮かんできたイメージは円(球)だ。卵の黄身もご飯をよそうお茶碗も(上から見れば)円形であり、一説には宇宙も球形と言われている。2,3,5首目はやや暗い雰囲気の独白めいたものになっており、その導入としての「食われる」が効いてくるように思う。

地球から遥かなブラックホールさえきみの心を惹きつけるのに/衣未(みみ)「ブラックホール」
ストレートに恋心を詠った連作。主体の気持ちに天体好きなあなたはまだ気づかずにいる。主体(私)→あなた→天体・宇宙の一方通行な関係性が愛おしい。

星が死ぬように死にたい暗闇へ秘密もあなたも抱えたままで/楢原もか「マイホープ ユアホープ」
「星が死ぬ」という比喩が絶妙。星が死ぬときは大きな爆発が起こりますが、そうではなく、遠くから星の死の光を観測しているような静かさと鮮やかさが伝わってきます。

この道を明日も通る
ダイモスとフォボスのように擦れ違うまま/mis0no「LOST HOLE」
ダイモスとフォボスは全く異なる動きをする火星の2つの衛星。タイトル「LOST HOLE」が孤独さを感じさせる歌に見事なまでにマッチしている。敢えての複数行の試みも、読む際の”間”を生みだして叙情性をより高めることに成功している。

星はもう死にさうでした死ぬまへの父とおなじ眼をしてゐました/雀來豆「かつて月がとても近くにあったころ」
星の死を淡々と受け入れつつも、「死ぬまへの父」を想起させるようななにか強い思いがあるのではないかと思いました。星にはない眼を「父と同じ眼」と捉える感受性や表現力の高さにも言葉を呑みます。


まずは前半の6名の方の感想を書かせていただきました。
次回は残りの方の歌に感想を…(がんばります)。

あっ、嫉妬林檎も「宇宙タイム」という連作で参加させていただきました~。

それではまた。

2019年5月11日土曜日

【感想】stylish century 2019 トリビュート中澤系

改元して初めての更新になります。
嫉妬林檎です。

今回は私も参加させていただいたネプリ「stylish century 2019 トリビュート中澤系」の感想です。
このネプリは歌人・中澤系さんが亡くなられて10年という節目に、中澤系プロジェクトさんが企画されました。
内容は「中澤系とわたし」をテーマとしたエッセイと、中澤系の有名な下の句”Ok, it's the stylish century”に上の句を付した短歌です。


スマホ押す指の記憶に黒電話 Ok, it's the stylish century/諏訪灯
stylish centuryの象徴ともいえる情報技術・製品が数多く詠まれている中で際立つ「黒電話」の存在感。スマホの現在(あるいは近未来)と黒電話の過去が同時に映し出され、奥行きのある一首になっています。

ごきぶりをちゃんと殺せる新聞紙 Ok, it's the stylish century/満島せしん
「ちゃんと」がいい。丸めた新聞紙で叩くというのはごきぶりを殺す一般的な手段ですが、これがなかなか殺せないんですよね。何度も何度も力いっぱい叩いてようやく殺せるという…。「ちゃんと」のひとことで、軽く叩いただけで殺せてしまうような新聞紙が生まれてきます。

コンビニへ迷いこむたびファンファーレ Ok, it's the stylish century/まちか
仕事や家事で疲れ果てたのだろうか、コンビニにただ入店したのではなく迷い込んでしまった。そんなとき聞こえてきた入店音がまるでファンファーレのようだった。よく頑張ってたねという一言の代わりになるメロディ。正しい姿とはいえないかもしれないが、これもひとつのstylish centuryなのだ。

目を閉じて終わらない坂かけ下りる Ok, it's the stylish century/辻一郎
昨今の技術の進歩は凄まじく、少しでも目を離していようものならすぐに取り残されてしまう。それでも僕たちは技術や時代の変化についていかなくてはならない。たとえ目を閉じてしまっても必死に走り続けなければならない。「かけ下りる」ことでスピード感だけでなく、自身の手の及ばないところから否応なく突き動かされている感覚が伝わってきます。

感想は以上の4首です。
ネプリの配信はすでに終了していますが、近い内にネプリに小冊子を追加したものがいくつかの書店に置かれるみたいです。私も楽しみに待っています。

令和最初の夏がやってきます。

2019年4月7日日曜日

お花見行ってきたよ

新元号発表の前日に石神井公園へお花見という名の桜撮影会に行ってきました。

撮影会と言いつつもひとりきりです。
これは単純に友達が少ないからですね。ええ。


石神井公園は初めて行きました。
広くて、たくさんの人がお花見に来ていて、
それでも騒がしいというよりはどこかのどかな雰囲気で。


いつにも増してシャッターを押す回数が増えていきました。

桜以外にも菜の花やモモ(だと思う)の花も咲いていて春をめいいっぱい感じられました。


今年の東京の桜は長く咲いていてもう少し楽しめそうです。



梅と桜の写真の話が続きましたが、
俳句や短歌や切り絵もどれもやりたいので少しずつ頑張っていきます。
それではまた。

2019年3月21日木曜日

湯島天神

気がつけば3月。
おかしいな2月は…?

気を取り直して、先日Twitterにも上げた湯島天神の梅の写真をここでも公開していきます(Twitterには上げてないやつ)。

ちなみに僕が使っているカメラとレンズは
・Canon EOS Kiss X7 ダブルズームキット
・Canon EF50mm F1.8 II (←親戚からのもらいもの。たぶんこれだと思う)
です。
カメラどれがいいとかあんまり詳しくないんですけどね。

写真の編集にはKiss X7についてきていたDigital Photo Prosfessionalというソフトを使っています。





湯島天神には初めて行ったんだけど、白梅も紅梅もいっぱい咲いていていい写真をたくさん撮れました。
梅まつりで屋台も出ていてすごく賑わっていました。




撮影当日は晴れていて気持ちよかったです!

今日は春分の日で桜の開花宣言もされましたね。
次は桜を撮りに行ってきま~す!

2019年1月13日日曜日

【感想】Re:Re:短歌

2019年、あけましておめでとうございます。
前回の更新から2ヶ月も空いてしまいました…orz

新年最初は短歌ネプリ「Re:Re:短歌」の感想です!
「Re:Re:短歌」は千原こはぎさんが企画してくださった、
二人一組で交互に返歌を計8首詠むものです。


外さむし内あたたかし玻璃窓のうち服のうち唇のうち/白川ユウコ(『結露』 逢×白川ユウコ)
リズムが良くて何度でも繰り返し口ずさんでしまう歌です。結婚はまだしていない同棲中の恋人たちを詠んだ返歌8首ですが、ふたりの関係性を直接表す言葉がほとんど使われておらず、語彙の豊富さと表現力の高さが伝わってきます。

消えそうな昼間の月を見ていますコンビニ前の横断歩道で/有希子(『しずく』 泳二×有希子)
これだけを読むと特に変哲のない一首のようにみえます。コンビニ前で何もしていない(月を見てはいますが)、大きな飛躍や唸るような比喩もない。しかし8首全体を見渡すとこの歌はとても際立っています。この歌の前の3首では、主体は常に”あなた”を追いかけておりどこか焦りさえも感じさせます。一方で後では”あなた”よりも自分自身のことに焦点が移り、「ゆっくり水をやる」「しずく一粒染みてゆく」などスピード感も落ち着いてきます。消えそうな昼間の月になにを思ったのでしょうか。シンプルなようで非常に奥深い一首だと思います。

不自由と自由で編んだこの恋が終わらぬように手が離せない/月丘ナイル(『カノン』 中村成志×月丘ナイル)
人間関係は不自由と自由の積み重ねですが、恋人というのはそれを一層強く感じてしまうのではないでしょうか。この前の歌でふたりはてぶくろを分け合っており、「編んだ」はそこにもかかっているのがとても上手です。

飛べるよ。あなたは飛べる。風はいまシナプスの速さを超えて、来る。/満島せしん(『あるいは、詩』 満島せしん×笹川諒)
非常に個人的な嗜好ですが、句読点を多用した歌ってそんなに好きじゃないんです。が、このお二人の歌は別格でした。タイトル『あるいは、詩』とあるように一行詩のように流れこんでくる歌、57577というより31文字で魅せてくる歌です。ほんとうに、すごい。

少なめではありますが感想は以上4首です。

短歌の感想ではないですが、短歌の内容に沿ったアイテムや動物のイラストがページのあちこちに置かれているのが素敵でした…!


私はかき永はるかさんと『枯木星は瞬く』で参加させていただきました。
返歌ということでお相手の歌をしっかりと読み込むことも大切で、
自分の解釈が正しいのか不安になりながら歌を詠んでいきました。
私の希望でいちごつみ形式を取らせていただいたのですが、なんか摘みきれてないような怪しいところがありますね…。
そんな感じで難しさもありましたが、またそれも楽しく挑戦することができました。

じゃあね。

2018年11月11日日曜日

【感想】うたつかい31号

前回更新から少し空いてしまいました。
うたつかい31号、今回ものんびり感想を書いていきまあす(*^^*)


きみが手に取るまんじゅうが世界にただひとつつぶあんでありますように/尼崎武「花になる」
人はみなそれぞれ違う人生を歩む。生きていれば苦しいときもある。それでも君には幸福であってほしい。そんな強い思いをただぶつけるのではなく、「まんじゅう」「つぶあん」といった親しみやすい言葉で調和させている。なんて優しい歌だろう。

水田の地図の記号のそのままに前に倣えと青き稲立つ/杏「水無月に」
水田の地図記号はまっすぐな稲の様子から作られたのだろう。
故に「記号のそのままに」はひどく当たり前のことなのだけれど、違和感を覚えることなく流れるように読んでしまう。そんな自然さが心地よい。

あそこの毛(寝てるあいだに抜けたやつ)封筒に入れて送ってもらう/たかはしりおこ「『フラッシュバックに勝つる』をひらく」
いったいどういう関係の二人なのだろうか。前半だけを見ると懇意であるかのように思えるが、後半いっきに謎めいてくる。捨ててもらってはダメで送ってもらわなくてはなのだろう。なんとも奇妙な関係である。ナイス害さんの「フラッシュバックに勝つる」を読めば分かるのだろうか。

詠む人が読む人でしょうカラオケに歌うひとしかいないみたいに/春森しゆう「顔が生まれる」
難しい歌です。倒置法が用いられているのですが繋がりがしっくりこない。
前半の57と後半の577はそれぞれ単体で見るとおかしくないのに、繋げると途端にわからなくなってしまう。どう読めばいいのでしょう…。

正しさは雷雨のようで安全なところからならきれいに見える/御子柴楓子「檸檬」
正しさはきれいである。正しいことをしているひとはかっこいい。しかしそれは自分がその正しさと関係のないところにいるからだ。自分に向けて正しさを突きつけられたとき、僕は果たしてそれをきれいと言えるだろうか。大切なことを心に問いかけてくる一首だ。

こゑ出して『火垂るの墓』を読みをりき朝のひかりの待合室に/山川築「灰羽」
5首ともすべて美しく、そのなかでも圧倒的に輝いているのがこの歌だ。悲惨な戦争を描いた火垂るの墓を黙読するのではなく音読している。主体の気丈で満ち足りた心を示すかのように待合室には朝のひかりが差し込んでいる。イメージが映像として脳内に流れる歌は貴重だ。


感想は以上6首ですが、ほかにもたくさんの素敵な歌が収録されています。
嫉妬林檎はテーマ詠「アルファベット」で参加させてもらっています!

ところでこのうたつかいで私が密かに楽しませてもらってるのが、巻末の参加歌人さまご紹介のコーナー。
一言コメントと毎回テーマ詠にちなんだ質問はみなさん個性が出ていて楽しいです。
嫉妬林檎のコメントは毎回憂鬱でなんだか申し訳ないですね。次は明るい話ができればと思います。
それでは~。

2018年9月29日土曜日

「君と君」

つまらない人間にはなりたくない、
なんて言った時点で君はつまらない人間に認定されたのだった
大地震の翌日にも太陽は昇ってくるのに
君がつまらないやつだってことは分かりきったことなんだ
濁ったパイナップル飴を舐めながら屋上で孤独を謳歌するくらいなら
飛び降りたほうが特別になれるよだから早く飛び降りちゃえ!って思ったのは今が初めてだから安心して
光のように生きているつもりで真夜中の赤信号に立ち止まるしかできないことも知ってる
君はいちどお別れを言うべきなんだ、いいかい、いくよ。じゃあね

2018年9月9日日曜日

【感想】うたつかい30号

木曜深夜に首を盛大に痛めてしまった嫉妬林檎です。

さて主題のうたつかいはエッセイも含めてボリュームがすごいですよね。
読むのにも自然と気合が入ります。笑
すでにうたつかい31号が文フリで頒布されているらしいなか、前号の中から感想を書いていきます(遅)。


馬の瞳のようなひとだと思いつつ正面は避ける荻原さんの/岩田あを「乱世界」
馬の瞳のようをどのようにとらえるかですが、僕は顔の側面にある瞳と読みました。
正面を避けたいというのは恥ずかしさからでしょうか。しかし瞳が側面にあればしっかり荻原さんの視界の中心に入ってしまいます。タイトル「乱世界」にぴったりのユニークな一首です。

きみはもう捨ててしまった左手で未遂の春を遠いところへ/泳二「約束ノート」
左手で~がエモすぎてですねえ。(エモいの使い方はあってますかね…?)
守れなかった約束の連作ですが後悔はそれほど感じられず、優しさすら覚えてしまう雰囲気がすごくいいです。

夭折のをとこを思ふ 英国のほくろのやうなジブラルタルで/東風めかり「アヤ・ソフィアの見える窓」
異国情緒が素敵に感じられる連作でした。
土地や建物の名前を知らなかったのでググりながら読みましたが、今までの自分の人生に全く関係なかったものが突然目の前に突き出される刺激が楽しい。

敗戦をテロップで知る雨の日にこまかくちぎるグリーンサラダ/高松紗都子「完全なパフェ」
ここでの敗戦はスポーツの贔屓チームの結果でしょうか。一瞬戦争かと思いましたがそこまで深刻な感じではなさそう。が、やはり敗戦の言葉の力強さといいますか、穏やかな一首のなかでこの二文字が適度なアクセントとして効いているのがいいです。

この夜の叶うことのない会いたさが研ぎ澄まされて針になる朝/千原こはぎ「濁りの雨」
会いたいという気持ちが夜の間に針に変わってしまう、この針という痛みを連想させる言葉の選択が見事だと思います。会いたいと思う一方で、(会えない)現実をたんたんと見据えている大人らしさが見えてきます。

最近はきみに付箋を貼る日々ですくるぶしに青、左胸に赤/西淳子「中二病文具店」
可愛い一首ですね。中学生あるいは高校生くらいかな、直接的な言葉はなくても好きな人への思いが伝わってきます。貼られた付箋にはなにが書かれているんでしょうか。わたし、気になります。

感情を使ひ果たして眠るときわれに遺作のごときため息/濱松哲朗「冬の手摺り」
スーパー共感です。他人と接するとどうしても感情を消費してしまう(良い悪いの問題ではなく)。一日のすべてを出し切ったため息はまさに遺作ですね。

わかりやすく責められたなら 潮騒の記憶さやかに耳をつらぬく/氷吹けい「潮騒の記憶」
連作を通して抽象度が高い。こういう歌好きだなというだけでなく、読みきってうまく言葉にしたい。したいんですけど……ううぅ。
相手から遠回しに非難されており、さらにその非難が海辺での同様の記憶を呼び起こしている…といった感じでしょうか。

すこやかに生きよと願う母として君の小さい指を数える/福山桃歌「おかあさんって今日も呼んでね」
新しい発見や大きな飛躍があるわけではない親子の日常の歌ですが、逆にこういった歌のほうが言葉の選び方が大切になってくるのではないかと感じています。ありきたりなようでいて、でもグッと読ませる力があります。

輪郭を象るような熱だった初夏の写生で出会わなければ/藤本玲未「mimei」
これも読み解くのが難しい。ポイントは下句が倒置なのかどうかかな。
私は倒置ではなく後ろに続いていく言葉を出会わなければで切ったようにとりました。
みなさんどう読まれたのでしょうか。。

遠くから水膨らんでくる予兆わたしのなかの調和を乱し/吉川みほ「予兆」
わずかな恐怖を伴って読者の調和さえ乱してドキドキさせてくれる歌。予兆に不安になる主体はしかし連作の最後に春を見つけている。緊張感が心地よかったです。


ここからはテーマ詠「文房具」


シャーペンのつむぐ水兵リーベぼく、の、ふねをこぎ黒板は海/御殿山みなみ
授業中いつの間にか寝てしまったことを短歌でこんなにも自然に表せるのか…!という衝撃。ひとつ間違えれば鼻につきかねない読点の多用もこれ以上はないほどパーフェクト。すごい、すごすぎる。

ペン先に夜をたっぷり含ませて書いておきたい恋文がある/氷吹けい
夜は感情的になりやすい(科学的根拠があるかは調べてません)。
恋文を書くには昼ではだめなのだ。夜、ペンにまでたっぷり込めた思いはきっと届くでしょう。



以上13首への感想でした。
普段の数倍書いたのですこし疲れました。そして私の語彙力のなさもそろそろ隠しきれなくなってきました。
他にもたくさんの素敵な歌が掲載されているのでぜひぜひ。
(嫉妬林檎も参加させてもらってます!)


気がつけばもう9月なんですね。なんだか今年はなにもできていない気がします。
残り4ヶ月で取り戻したいなあでも無理だろうなあ。

2018年8月18日土曜日

「さよならの珈琲」

悲しいときに笑うようになった
楽しいときに泣きたくなった
光だと思っていたものが嘘だった
捨てたいはずの社会性だけが本物だった
人や時間や生活のあらゆるものが積もった身体を
浄化してくれるのは都会に溢れているカフェだけだ
週に一度のカフェの珈琲でようやくまた歩き始める
壊れたコンパスだけを御守に
いつしかさよならを伝えることが目的になった
例えば
空と海の青の違いとか
東京のエスカレーターの乗り方とか
そういうものを全部まとめてさよならと伝えたい
君に 会って 伝えたい

わたしはまた珈琲を注文する
さよならのために