2019年5月26日日曜日

【感想】スーパーマッシブ(1/2)

10連休にまた会いたい嫉妬林檎です。

今回のスーパーマッシブは、先日のブラックホール初撮影成功のニュースに端を発し(?)、荻森美帆さんが企画された、ブラックホール関する短歌1首以上を含めた連作5首のネプリです。

そもそもブラックホールの撮影なんてどうやっているのか全然わからなくて
適当な記事を読んだのですが…ちんぷんかんぷんでした(´・ω・`)
(ちなみに僕が読んだ記事はこちら

音もなく電子のほのお焚書するモノリスの裏に回る/笛地静恵「ぬばたまの目」
私の脳内辞書にない言葉が連作全体で多く用いられており、ひとつずつ調べながら読んだのですがなかなか読み解けません…。「モノリス」は単なる岩というより人工的な石柱と捉えるべきか。「電子のほのお」と合わせてSF感が好きです。

鶏卵がはじめて光にさらされて熱々ご飯とともに食われる/丸地卓也「啄木の黒きもの」
すぐに浮かんできたイメージは円(球)だ。卵の黄身もご飯をよそうお茶碗も(上から見れば)円形であり、一説には宇宙も球形と言われている。2,3,5首目はやや暗い雰囲気の独白めいたものになっており、その導入としての「食われる」が効いてくるように思う。

地球から遥かなブラックホールさえきみの心を惹きつけるのに/衣未(みみ)「ブラックホール」
ストレートに恋心を詠った連作。主体の気持ちに天体好きなあなたはまだ気づかずにいる。主体(私)→あなた→天体・宇宙の一方通行な関係性が愛おしい。

星が死ぬように死にたい暗闇へ秘密もあなたも抱えたままで/楢原もか「マイホープ ユアホープ」
「星が死ぬ」という比喩が絶妙。星が死ぬときは大きな爆発が起こりますが、そうではなく、遠くから星の死の光を観測しているような静かさと鮮やかさが伝わってきます。

この道を明日も通る
ダイモスとフォボスのように擦れ違うまま/mis0no「LOST HOLE」
ダイモスとフォボスは全く異なる動きをする火星の2つの衛星。タイトル「LOST HOLE」が孤独さを感じさせる歌に見事なまでにマッチしている。敢えての複数行の試みも、読む際の”間”を生みだして叙情性をより高めることに成功している。

星はもう死にさうでした死ぬまへの父とおなじ眼をしてゐました/雀來豆「かつて月がとても近くにあったころ」
星の死を淡々と受け入れつつも、「死ぬまへの父」を想起させるようななにか強い思いがあるのではないかと思いました。星にはない眼を「父と同じ眼」と捉える感受性や表現力の高さにも言葉を呑みます。


まずは前半の6名の方の感想を書かせていただきました。
次回は残りの方の歌に感想を…(がんばります)。

あっ、嫉妬林檎も「宇宙タイム」という連作で参加させていただきました~。

それではまた。

2019年5月11日土曜日

【感想】stylish century 2019 トリビュート中澤系

改元して初めての更新になります。
嫉妬林檎です。

今回は私も参加させていただいたネプリ「stylish century 2019 トリビュート中澤系」の感想です。
このネプリは歌人・中澤系さんが亡くなられて10年という節目に、中澤系プロジェクトさんが企画されました。
内容は「中澤系とわたし」をテーマとしたエッセイと、中澤系の有名な下の句”Ok, it's the stylish century”に上の句を付した短歌です。


スマホ押す指の記憶に黒電話 Ok, it's the stylish century/諏訪灯
stylish centuryの象徴ともいえる情報技術・製品が数多く詠まれている中で際立つ「黒電話」の存在感。スマホの現在(あるいは近未来)と黒電話の過去が同時に映し出され、奥行きのある一首になっています。

ごきぶりをちゃんと殺せる新聞紙 Ok, it's the stylish century/満島せしん
「ちゃんと」がいい。丸めた新聞紙で叩くというのはごきぶりを殺す一般的な手段ですが、これがなかなか殺せないんですよね。何度も何度も力いっぱい叩いてようやく殺せるという…。「ちゃんと」のひとことで、軽く叩いただけで殺せてしまうような新聞紙が生まれてきます。

コンビニへ迷いこむたびファンファーレ Ok, it's the stylish century/まちか
仕事や家事で疲れ果てたのだろうか、コンビニにただ入店したのではなく迷い込んでしまった。そんなとき聞こえてきた入店音がまるでファンファーレのようだった。よく頑張ってたねという一言の代わりになるメロディ。正しい姿とはいえないかもしれないが、これもひとつのstylish centuryなのだ。

目を閉じて終わらない坂かけ下りる Ok, it's the stylish century/辻一郎
昨今の技術の進歩は凄まじく、少しでも目を離していようものならすぐに取り残されてしまう。それでも僕たちは技術や時代の変化についていかなくてはならない。たとえ目を閉じてしまっても必死に走り続けなければならない。「かけ下りる」ことでスピード感だけでなく、自身の手の及ばないところから否応なく突き動かされている感覚が伝わってきます。

感想は以上の4首です。
ネプリの配信はすでに終了していますが、近い内にネプリに小冊子を追加したものがいくつかの書店に置かれるみたいです。私も楽しみに待っています。

令和最初の夏がやってきます。