2018年3月18日日曜日

【感想】第一回尾崎放哉賞

第一回尾崎放哉賞が発表されました。

第一回尾崎放哉賞入賞作品

選外に終わりましたが嫉妬林檎も応募していました。

向日葵畑が俺を見る/嫉妬林檎
一寸の無駄もなく二度寝る/嫉妬林檎

自由律俳句は定形俳句とはまた違った良さや難しさがありますね。
定形は詠草のここを直したほうがいいかなというのが
自分なりにつかめているのですが、自由律は全然わからないです。
これでいいような…でももっとよくなるような…と行ったり来たりです。
これはまあ僕の自由律句の詠数が少ないからというのもあります。


入賞された作品の中で特に好きなのは次の2つです。

月の匂いの石に坐る/藤田 踏青
「月」というのがいいなと思いました。月に行ったこともなければ月の石を見たこともない。月の匂いなんて絶対にわからないですよね。でも月の匂いがしている。ひょっとしたら他の匂いの石も近くにあるのかもしれない。今日は月の匂いの石にしようか、と選んでいるところを想像してしまいます。

点滴はずれて人間になる/西田 一彦
直感するおもしろさと一瞬後れてやってくる納得感。点滴をしている間は人間ではなかった。ではいったいさっきまでの自分は何だったんだろうかという恐ろしさ。考えるほど深みにはまるけれどどこか心地よい感覚に包まれます。

この2句の感想を書きながら思ったのは、両者とも読み手にいろいろと想像させる力が凄まじいというのがあります。
今更ではありますが想像させる歌のつよさを改めて感じさせられました。自分で詠むときもその点をもっと注意してみようと思います。

2018年3月10日土曜日

【感想】I Love you と言ってくれ

雨さんの短歌ネプリ企画「I Love youと言ってくれ」に嫉妬林檎も参加させていただきました。この企画は、「愛」「恋」「好」など直接的な言葉を使わずに「愛している」を詠むものです。




いくつか感想を。

先生はご存じかしらわたくしの気持ちが辞書に載っているのを/水無月水有
先生は辞書を持ち歩く国語の担当でしょうか。「ご存じかしら」と言いつつもわたしは先生が知らないことを分かっているのだと思います。シチュエーションはよくあるものですが、言葉遣いと秘密の感情がマッチしていて素敵です。


春の降る横断歩道を渡ろうか小指と薬指をつないで/大橋春人
「春の降る」は日差しや季節の花びらをイメージし爽やかな雰囲気が良いです。下句はなぜ小指と薬指なのかということが最後まで読みきれませんでした。おそらくここがこの歌の重要なポイントだと思うのですが…ううん難しい。


陽だまりを背中に乗せてうたた寝をするこのひとに会うためだった/千原こはぎ
付き合いたてのカップルにも長年連れ添ってきた夫婦にも読めて、どちらの場合でも優しい、まさに陽だまりのような情景が目に浮かびます。この人に会うためのうたた寝。愛、愛です。


鍋の具を買うスーパーで保冷庫の冷気を浴びたときにわかった/道券はな
冷気を浴びてわかったことは相手への恋心。ここで!?という思いとここしかない!という絶妙な場所とタイミングが素晴らしいです。この衝撃は短歌ならではですね。



最後に拙歌を。

包丁は慣れてないけど白妙のきみに届ける8羽のうさぎ/嫉妬林檎
「白妙」を使いたかっただけなんてことはたぶんない。